トコジラミってどんな生き物?

【トコジラミCimex lectularius (Linnaeus) 】

 南京虫(ナンキンムシ)とも呼ばれており,カメムシ目カメムシ科に属す。吸血する。体色は赤褐色。成虫の体長は5~8ミリ程度で目視が可能であるが,孵化したばかりの幼虫は1.3ミリ程で小さく淡黄色で凝視しないと判らない。翅は退化しており飛ぶことはできないが,動きは素早い。壁や天上に登ることができる。扁平な形をしており,僅かな隙間にでも潜り込むことができる。卵は乳白色で1ミリ×0.5ミリ程の大きさで透明な粘性の幕が表面にあり様々な場所に付着させることができる。早ければ1週間ほどで孵化する。孵化した幼虫もすぐに吸血ができる。成虫の寿命は長く,27℃で3~4ヶ月,気温が低くなるとその寿命は延び,1年から1年半である。成長や産卵には吸血が必要であるが,比較的飢餓には強く,無吸血状態になったとしても成虫なら70-80日程度は生存でき,気温が低くなればその日数はさらに伸びる。昼間は,床板や壁の隙間,ベッドや椅子の中,座布団やカバンなどの縫い目の間,カーテンの重なった部分,壁紙の中,コンセントの隙間,柱などの木材の裂け目などに潜んでいる。夜間に,ヒトの呼気に含まれる二酸化炭素を感知して出てき,肌の露出した部分を狙い,吸血する。







IMG_2827_R.JPG

トコジラミの生態

画像をクリックで拡大画像が見られます。

トコジラミ_R.JPG


成虫は比較的大きく,目視が可能です。部屋の壁や柱などで見つけることができます。また,狭いところが好きなので,柱の角や部屋の隅じっとしているのを見つけることもあります。

トコジラミ2齢幼虫_R.JPG


幼虫は小さく,特に生まれたばかりの幼虫はこの画像(爪楊枝の頭ぐらい)よりさらに小さく,目視が難しいです。また,小さく軽いために,ちょっとした風で舞い上がることがあり,服や物に付着させてしまいます。

脱皮_R.JPG


成虫になるまで5回ほど脱皮をします。生きた個体をみつける前に,脱皮の殻を見つけることもあります。

CIMG_R.JPG


トコジラミの栄養源は血液のみです。その血液から必要な物を吸収し,不要な物を黒い糞として出します。潜伏場所の近くに糞をすることが多く,黒い塊として見つけられます。画像の様な黒い糞の塊があれば,そのすぐ近くに潜伏場所があると考えられます。



IMG_232R .JPG


トコジラミは吸血しないと生きていけません。吸血対象を探索する際は呼気に含まれる二酸化炭素や体温を感知します。また,吸血時に吸血対象が活動的だとうまく吸血できません。そのため,吸血対象が長時間ジッとしている場所,例えば,寝具周辺やソファー周辺などに潜んでいることが多いです。この画像は座椅子の座面と背面の結合部側面に潜んでいたトコジラミです。

IMG_240_R.JPG


トコジラミは様々な場所に卵を産みつけます。画像のようにカーテンの折り目部分やその繊維の間,ベッドのネジ穴や割れ目や壁の中など,あらゆる隙間や手の届かない場所に産み付けます。場所は定まっていません。

IMG_152_R.JPG


成虫になり半日もすると交尾可能になります。そして一度の交尾でたくさん産卵します。その数は1日に5個ほどをほぼ毎日産み,一生で200~500個にもなります。そして環境がよければ,一週間以内に孵化し,一か月ぐらいで成虫になります。そのため,交尾後のメス一匹が侵入しただけで,大量生息に発展してしまうことがあります。画像の白い点はすべて卵です。

IMG_232_R.JPG


トコジラミは扁平な体型をしています。その体型を利用して狭く暗い場所に潜り込みます。ベッドのマットレスの間やベッドフレームの繋ぎ目,畳の下,壁に掛けてあるものの裏,壁の隙間,壁紙の裏,電化製品の内部,本の中,書類の中などなど様々な場所に潜り込みます。生息数が増えれば,その潜伏場所はより多岐に渡るようになります。画像は,襖の木枠内部に侵入しているトコジラミです。

トコジラミに吸血されると→非常にかゆい


 トコジラミの栄養源は血液のみです。ヒト以外にも犬や猫,鳥やネズミなどからも吸血します。吸血する際は,下の写真の様な針状の口吻を刺し込み,血液の凝固を防ぐための成分を唾液とともにヒトの体内に注入します。そこに含まれるタンパク質に対して体が抗体を作りやがてアレルギー反応を示します。そのためしばらくすると刺咬部に赤斑が表れ,強烈な痒みが表れます。ただし,吸血被害を受け始めた極初期の頃はまだ体の中でアレルギー反応が起こっておらず,痒くなりません。何度か刺されているうちに痒みを覚えます。また,刺されても痛くありません。そのため,人が短期間しか滞在しないようなホテルの部屋での発生などでは,刺されたお客様がまったく気が付かず,発見が遅れ,被害が拡大してしまうことがあります。また,一般の家庭でも発見が遅れ,他の部屋へ被害が広がってしまいうことがよくあります。痒みは個人差はありますが,強烈な痒みで,ひつこく続くことが多いようです。そのため,刺されることへの恐怖も相まって不眠に陥ってしまうことが多いです。

トコジラミの赤斑_R.jpg

トコジラミ口吻2_R.JPG

病気の媒介の可能性は?→感染症の媒介はないが・・・


 今のところトコジラミによる感染症の媒介の報告はありません。吸血した血液の中にウィルスが含まれていたとしても,次の吸血までの間に死滅すると考えられています。ただ,近年新たな感染症などが発見されてきているので,将来的にわたって安全かどうかはわかりません。.人への害ではやはり「かゆみ」が一番の問題となっています。かゆみにより不眠になったり,情緒不安定になったり,さらに掻きむしることにより皮膚に傷ができることがあります。さらに,その傷口から菌の侵入し化膿する場合もあります。また,脱皮殻や死骸が乾燥し粉末となり,ハウスダストとにより喘息や皮膚炎などを悪化させることもあります。居住空間におけるトコジラミの生息は「生活の質」を損ねます。

トコジラミはどこからやってくる?→人や荷物に付着して移動


 トコジラミの翅は退化していて飛ぶことはできません。だから野外から室内に飛んで入ってくることはありません。また,素早く歩くことは出来ても,野外を歩行し遠くまで移動することはしません。トコジラミは,人や物が移動する時に,その服やカバンや荷物に付着して拡散していきます。例えば,宿泊先のホテルや旅館で発生しておりカバンや服に卵や生体をつけて帰ってきた,リサイクル品の家具や古本を購入しそれに付着していた(前の持ち主宅で発生していた)などです。介護士が介護先のお宅で発生していることに気が付かず,自分の荷物につけて自宅に持って帰ってしまったという例もあります。生息している場所ではなくても,タクシー内や電車,公衆浴場など誰かが落としていったものを偶然もらうことも考えられます。人が行き来し交差するところであればたいてい,その確率の差はあれトコジラミをもらってしまう可能性はあります。
 日本において,トコジラミは第二次世界大戦後の薬剤(DDT)の普及により1970年代にはほとんどみられなくなっていました。EUやアメリカにおいても同じような状態でした。しかし,2000年以降,欧米でトコジラミによる被害は増加,問題になり始めました。その後,日本でも被害が増加傾向にあります。一度減ったはずのトコジラミ被害がなぜ増加しているのか。その理由として
 ・ビジネスや旅行による人の往来の増加
 ・物流のグローバル化
 ・中古品の流通増加やレンタル品の増加
 ・使用してきた薬剤への抵抗性獲得個体の出現による難駆除化
など,いくつかの要因が揚げられています。日本でも今後さらに増加していくことが懸念されています。

DSC_0347_R.JPG

書類の中_R.JPG

トコジラミの生息が疑われたら→自分での駆除は難しい

 まずはその場所の使用をやめてください。その場所からの物品の搬出もしないでください。人や物の出入りにより,他の場所にも生息が拡大する可能性があります。
 さらに歩行による拡散を防止するため,ドアの隙間に目張りをしてください。虫を吸引している可能性があるので掃除機のゴミパックもビニールに入れ廃棄してください。
 また,市販の一般的なスプレー式害虫用駆除剤,特にピレスロイド系薬剤が含まれているもは使用しないでください。ピレスロイド系薬剤に対して強い抵抗力をもつトコジラミが増加しており効果が期待できないどころか,忌避させる効果が強いため,より狭い空間にトコジラミが逃げ込んだり,より細かな荷物に生息が拡大したりする危険性があります。また,一般家庭でよく用いられる市販の蒸散剤・燻煙剤はトコジラミが潜んでいる狭い間隙内部にまで薬剤が到達しないので,使用しても完全な駆除は難しいです。むしろ,生息範囲を拡大させてしまう可能性があります。薬局や通販で購入できる業務用の薬剤もありますが,取り扱いが難いため安全性を考えるとお勧めできません。
 スチーマーなどによる加熱処理(致死させる温度に到達できているか)や掃除機による吸引(吸引だけでは死なない)もうまくやらないと効果が望めません。専門業者も使用しますが,あくまでも補助的な役割です。


自力で駆除しようとせず,被害を拡大させる前に専門業者に相談するのが一番安心です。

また,痒みがあるからといって,トコジラミが原因とは限りません。ダニやノミが原因の場合もあり ます。まずは原因把握のためにも,専門業者に相談してみることをお勧めします。